二重過程理論の中の批判的思考(2)

昨日に引き続き,『心は遺伝子の論理で決まるのか』の3章と4章について書きます。 第三章では,合理性(道具的合理性)と進化的適応を区別すべきことが述べられています。「合理性が乗り物の利益にかかわるのに対して,進化的適応は遺伝子の利益にかかわり…

二重過程理論の中の批判的思考(1)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』を読みました。2008年に翻訳が出されているのですが,もっと早くに読めばよかった,と強く思いました。それは,「思考」について考える上で,本書がとても示唆的な内容を持っているから,というだけではなく,心理学や関連…

「21世紀型スキル」を育む授業

前に21世紀型スキルってなに?というエントリを書きましたが,「21世紀型スキル」を育む授業が公開された,という記事がありました。記事の正確なタイトルは,「東大、MS、レノボなどが「21世紀型スキル」を育む授業を公開 | 日経 xTECH(クロステック)東大…

教育改革とクリティカルシンキング

4日の国家戦略会議で平野文部科学大臣が「社会の期待に応える教育改革の推進」と題する報告を行った,との記事がBLOGOS(6/5)にありました。この報告のなかに,クリティカルシンキングの語が出てきます。報告資料(PDF)には7つの教育改革が書かれているの…

拙著の感想

拙著『最強のクリティカルシンキング・マップ』への感想をいただきましたので,2件紹介します。まずは,筑波大学(元お茶の水女子大学)の内田伸子先生。本をお送りしたところ,「一気に拝読しました。感銘を受けました(^-^)」とのことで,次のような感想を…

クリティカルシンキングで決断

「クリティカル・シンキングによる人生の決断」という講座が,「ママモコモ」というサイトの「ママのチエ」というコーナーで紹介されていました(こちら)。講師は狩野みき先生という英語講師の方,対象は母親(このときは15人),所要時間は1時間半だった…

ICUにおけるクリティカルシンキング教育

調べ物をしていたら,「リベラル・アーツ教育の根底を支えるクリティカル・シンキング〜クリティカル・シンキングによる授業展開とその成果〜」(国際基督教大学 富山真知子)という文章に行きあたりました。国際基督教大学のリベラル・アーツ教育を支える,…

反知性的な国民を望む政府?

『政府は必ず嘘をつく─アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』の著者,堤未果氏のインタビュー記事を読みました。 ── 『政府は必ず嘘をつく』というタイトルですが、誰のために嘘をつく、というタイトルですか。例えば犯罪を犯した犯人が嘘をつ…

21世紀型スキルってなに?

21世紀型スキルという語があるようです。その中には批判的思考(クリティカルシンキング)も含まれているようです。 私はこのことについてほとんど知らないので,これが何で,どこからどのような経緯で出されてきた概念なのかについて,とりあえず,Googleで…

『最強のクリティカルシンキング・マップ』が出ました

一般向けのクリティカル・シンキング本を出しました。こちらです。最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう作者: 道田泰司出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2012/05/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 8人…

アメリカの高校〜大学で学ぶ批判的思考

ちょっと前の記事ですが,ニューズウィークのインタビュー記事で,「彼女が「白熱教室」で学んだこと」というのがありました。高校でアメリカに渡り,大学,大学院を出てグーグルで働いている日本人へのインタビューです。このなかに,次のようなやり取りが…

外向的な(考えるより行動する)社会

TEDで,「内向的な人が秘めている力」というスピーチを見ました(こちらに動画と翻訳があります)。そのなかで,思考と,協同的活動についての部分が興味深かったので,抜き書きしておきます。 〔前略〕 今の教室はどんな風でしょう? 私が子どもの頃は、机…

判断力としての批判的思考

『小学校 学習指導要領の解説と展開 総則編―Q&Aと授業改善のポイント・展開例』を見ていたら,批判的思考の語が出てきたので,忘れないように記しておきます。小学校学習指導要領の解説と展開 総則編―Q&Aと授業改善のポイント・展開例作者: 無藤隆,寺崎千秋,…

言語活動としてのクリティカル・シンキング

文部科学省が平成22年12月に「言語活動の充実に関する指導事例集」(小学校版,中学校版)というものを出しています(文科省のページはこちら)。その中に,クリティカル・シンキングという語が2箇所に出てきます。一つは,「第1章 言語活動の充実に関する…

批判的思考本来の意味がぼやけてる?

とあるブログにコメントとして書いたので,こちらにも転載しておきます。これは,批判的思考に関するシンポジウムに参加された方が,「批判的思考がなんだか「要するに賢いこと」みたいになってきて,本来の概念の意味がぼんやりしてきてないだろうか」とい…

教師が飛躍するとき(4)−うまくいかないときの対処法

前回に引き続き、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいます(今日で最後です)。平林和枝先生の「研鑽を積み重ねて」という論考では,「教師が力を入れるほど,子どもがしらけたり教師と違う方向に行く」場合の対処法が書かれていました。それは次のよ…

教師が飛躍するとき(3)−見守るか,指導するか

前回に引き続き、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいます(進んでいない...)。飯島修治先生の「自分を生徒の立場において」という論考は,興味深いものでした。飯島先生は,理学部を出て高校の教師になっているのですが,定時制で勤務しながら大…

教師が飛躍するとき(2)−思いや行動を可視化する

前回に引き続き、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいるのですが、他の章では、たとえば「赴任校で教師同士が磨き合う雰囲気があったので成長できた」みたいな感じのものが多く、「考えることについて考える」ことにつながるものは、なかなか見当たり…

教師が飛躍するとき(1)−一人ひとりの思いを可視化して問題解決

今、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいます。この本は、10人の教師がそれぞれ体験した「飛躍したとき」のことについて語っている本です。教師が飛躍するとき―つまずきの克服・成長の仕方作者: 横尾浩一出版社/メーカー: 学陽書房発売日: 1995/03メデ…

キャリア・デザインと思考(7)−移行期の思考としての「統合」

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第5章(後半)を読みました。ここには、中年期のことなどが書かれています。「四十歳から四十五歳が中年への過渡期」(p.219)ということで、就職時に次ぐ大きな移行期として扱われていました。筆者は、こ…

キャリア・デザインと思考(6)−安定期の思考

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第5章(前半)を読みました。第5章の前半では、20代全般の問題について書かれています。就職時が移行期だとすると、就職後の20代は、「遭遇→順応(→安定)」をたどる、広い意味での安定期といえるかと…

キャリア・デザインと思考(5)−移行期の思考

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第4章を読みました。同書では、大きく言うとキャリアを「安定期と移行期の繰り返し」と捉えています*1。そのなかで、第4章では「就職時と入社直後の適応」、つまりキャリアにおける、人生最初の移行期…

キャリア・デザインと思考(4)−stop thinking & stop to think

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第3章を読みました。この章を読んでいて、キャリア・デザインと思考が密接に関係することに気付いたのですが、それは以下のくだりからでした。 高校時代の受験英語で、stop smokingとstop to smokeの違…

キャリア・デザインと思考(3)−人生をサイクルとして考える

昨日に続く第3回。『働く人のためのキャリア・デザイン』の第2章を読みました。この章では、キャリアは安定期と移行期の繰り返しだ、というトランジション・モデルが紹介されています。たとえばニコルソンの円環サイクル的なモデルは次のようなものです。 …

キャリア・デザインと思考(2)−流れに身を任せることの必要性

昨日の続きです。『働く人のためのキャリア・デザイン』の第1章を読んで考えたことを書きます。キャリアの話と思考の問題とが関わるのは、「いつ(いつでも)その問題を考えるべきか」という点においてです。たとえば、批判的に思考することは大変なことだ…

働く人のためのキャリア・デザイン(1)

また新しいカテゴリー「読書」を作りました。もともとは私は、読んだ本や日常について記録しようと思って「読書と日々の記録」というページを作っていたのですが、気力の衰えか、読書量が減ったこともあり、またWebページをタグ手打ちで作ってFTPでアップロ…

共通テストで思考力測定?

朝日新聞デジタル|大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ 日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸…

サンテグジュペリの名言

ある本を読んでいたら、次の言葉に出会いました。 船を造りたかったら、人に木を集めてくるように促したり作業や任務を割り振ることをせず、はてしなく続く広大な海を慕うことを教えよ。 (If you want to build a ship, don't drum up the people to collect…

長期スパンで育てる

奈良に行ったのは、奈良女子大学附属小学校の学習研究発表会に参加するためでした。附属小の授業、とりわけ公開研での授業というと、教材を工夫し、発問を工夫し、ときに教師がゆさぶる、ということが多いと思うのですが、奈良女はそのほとんどを禁じ手とし…

横断歩道を渡る鹿たち

新しいタグ「日々」を作ってみました。このページはもともと、「考えること」について考えたことを書くために開設したのですが、これからは日常的なことも書いていこうかなと思っています。更新頻度はそんなに多くはならないかもしれませんが。さて、先日、…