スポーツと思考

1年ほど前に読んだ文章で,ちょっと気になるものがあるので,ここに書いておきます。筆者は為末大氏。400mハードルの世界選手権でメダルを獲得した陸上選手です。『日本の論点2006』(文藝春秋社)のなかで,「武士道精神が勝つ−−なぜ私がふたたび世界の舞台でメダルを獲れたか」という文章を書かれているのですが,その中に,こういうくだりがあります。

私は最近,この種目こそ日本人の気質にもっとも向いている,と思えるようになってきた。海外の大会を転戦していて強く実感することだが,考えること,そして,苦しい練習に耐えることに対して,日本人ほど強い民族はいないし,また,耐えることを美徳としている民族もいない。(p.56, 強調は引用者)

後半はわかるのですが,前半(考えることに対して日本人ほど強い民族はいない)というくだりは,意外だったのでとても印象に残っていました。

今回改めて文章全体を読み返してみると,おそらくこれは,体格的なハンデがある分,戦略を考えて戦うしかないし,日本人の身体特性を考えてトレーニングするしかない,ということのようで,実際筆者はそうやったからこそ勝てたのだ,という話のようです。ハンデを克服するための思考(+忍耐),ということですね。またそれと同時にこの文章は,スポーツにおいて,考えることの重要性を示しているように思います。