批判的思考力の測定方法・評価基準

とある方から,批判的思考力の測定方法や評価基準について質問されましたので,以下のようにお答えしました。

すでにこれまでに書いてきたことともつながりますが,「何を測定すればいいのか」という問いの答えは,「何を教育目的としているか」という問いの答と同じになると思います(これと同じことは,批判的思考の測定というエントリで書いていますのでご参照ください)。

なお私は,「どの程度測定できるか」を考えたときに,自己評価方式の態度尺度にはかなり限界があると思います。というのは,例えば「無理な論理の飛躍はしない」という項目があったとき,はたから見ると無理に見えても,やっている本人は無理がないと思っているから結論を出すと思うのです。つまり,本当に無理な論理の飛躍をしていないかどうかは,自己評価方式の態度尺度では測定できないと思います。

もっとも,態度尺度もまったく無意味ではなく,たとえば「〜を心がけている」という質問なら,十分本人でも評価可能(というか本人にしか評価できない)でしょう。こういう感じで,教育上目指していることと測定上の対応,ならびに,その質問で何がどの程度測定可能かを考える必要があるのではないでしょうか。

あと,私だったら,自己評価や振り返りの内容を見るだけではなく,実際のパフォーマンスを計るでしょうね(自己評価で分かるのは,あくまでも「本人の意識の変化」ですので)。たとえば,仮想状況を提示して,それを分析させるとか,対処法を考えさせるとか,自分の実践を評価させる,といった,目的と直接対応したパフォーマンスをです。仮想場面でなく,実際の場面でそういうことがチェックできればベターだと思います。それを半期なり1年の授業の最初と最後で行い,個人内でどの程度変化したかを見るというのが,もっとも直接的な測定になるのではないでしょうか。

あと,評価基準を,ということでしたが,それについては,ネット上で「critical thinking rubric」と入れて検索されると,いくつも出てきます。たとえば次のようなものです。
http://www.insightassessment.com/HCTSR.html
http://wsuctproject.wsu.edu/ctr.htm
http://www.rio.maricopa.edu/distance_learning/critical_think_rubric.shtml