批判的思考を阻害するもの

とある学校の先生が,ご自分の教育経験を元に,とあるブログで「批判的思考を阻害するもの」について書かれている。それを見ながら考えたことを記しておく。

その先生の授業での経験によると,子どもが批判的思考をしないのは,次のようなケースがあるという(私のほうで要約して引用している)。

  • 直感で考えている
  • 人(特に成績のよい子)と違う意見をもつのが不安
  • 人と違うことを言うのが恥ずかしい

なるほど,確かにその通りだろうなあと思う。おそらく大学生も似たようなものではないだろうか。

これらに共通するのは,「皆がそうする(直感的に考える,など)からそうする」,「皆がそうしない(じっくり考える,など)からそうしない」というものだろう。あるいは,「そうする(直感的に考える,など)ことで日常,多くの場合,さして不都合は生じない」からそうするのではないだろうか。

これは要するに,批判的に,あるいはじっくりと考える「文化」に生きていない,ということではないだろうか。あるいは,批判的に(じっくりと)考えるという「生き方」を選んでいないというか。逆にいうならば,そこには,直感で考え,周りに合わせるという「生き方」を選んでいるということであり,あるいはそういう文化の中ですごしている,ということである。

そしてこれは,一概にどちらかが絶対的に良い生き方,良い文化だ,ということはいえないのだろうと思う。とすれば教育者として忘れてはならないのは,教育行為が「異文化侵略」にならないよう,「異文化理解」に努めつつ,しかしこちらの文化(批判的に考えること)の良さを伝え,こちらの文化,こちらの生き方に「誘う」ということなのかなあと思う。
ありのままを生きる―障害と子どもの世界 今ここに生きる子ども
ちなみにこのような考えは,ずっと以前,浜田寿美男氏の『ありのままを生きる─今ここに生きる子ども─』(岩波書店)*1を読みながら考えたことである。