領域普遍的批判的思考の測定

ちょっと思いついたのでメモです。領域普遍的な批判的思考を(そういうものがあったとして*1)どのように測定したらいいか,ということについてです。

このことを考える上で,大前提とすべきは,私は次の3つだと思っています。

  1. 批判的思考は,必ず特定の領域の具体的なテーマを通して学ばれる
  2. それを通して,そのテーマや領域を超えた一般的技能として批判的思考が学ばれる場合もある(かもしれない)
  3. 批判的思考の測定も,必ず特定領域の具体的なテーマを通して行わざるを得ない

たとえば心理学で言うなら,特定の問題に対して,適切な実験を計画し,実施し,結果を解釈する,という一連の活動を行います。

それを通して,たとえば「統制群と比較しないと適切な結論が導き出せない」ことを学びます(上記1)。

そこで学ばれるのは一般的にいうならば,「他の可能性を考慮し,それを排除することで1つの結論を導き出す」という「論理的な思考」です(上記2)。

しかしこれは,実験の論理を学ぶ中でしか身につかないかというとそうではありません。たとえば文学における解釈でも,さまざまな可能性を考え,他のものを適切に排除できたときに,多くの人が納得できる1つの解釈にたどりつきます(上記1)。

やっていることは心理学とは異なりますが,身につけられるであろう批判的思考はどちらも「論理的思考」と呼ばれるものになります。

領域普遍の批判的思考を測定する上でも特定の領域から出題せざるを得ませんが*2,その際には,「他領域を通して学ばれた批判的思考(上記1)が適切に一般化されれば(上記2),解けるようなもの」でないといけないと思っています。

つまり,問題はたとえば心理学の問題の形で出さざるを得ないにしても,それが心理学の知識や常識がないと解けないものではだめで,国文学なら国文学を通して学ばれた思考をちょっと広げただけでも解けるようなものでないといけない,ということです。もちろん,そういう問題を,いろいろな領域から出すのがベターでしょうね。

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ちなみに,ここに書いた以外の批判的思考の測定についての私の考えは,批判的思考力の測定方法・評価基準というエントリーに書いています。

*1:実は私はそういうものを測定する必要性はあまり感じていないのですが...

*2:問題を記号論理のような形で抽象化したとしても,それは「抽象度のレベルが上がった」というようなものではなく,「記号論理」という特定領域の思考法(上記1)にすぎないでしょう。