キャリア・デザインと思考(6)−安定期の思考

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第5章(前半)を読みました。

第5章の前半では、20代全般の問題について書かれています。就職時が移行期だとすると、就職後の20代は、「遭遇→順応(→安定)」をたどる、広い意味での安定期といえるかと思います。

おそらく筆者の考える20代というのは、「なんでもいろいろ試してみる二十代」(p.214)と表現されているような、考えるよりも行動する時代のようです。具体的には、次のように書いています。

○○になろうと道を選んだら、いくらいろいろ試すのが二十代であっても、その道の姿がきちんとみえるまでは、アクションをしっかり重ねないといけない。大きな道路の系統的な信号ではないが、青信号が続く限り、四つ辻では勢いよく飛ばしていこう。それが勢いというものだ。(pp. 264-265)

このように、大事なのは、試すこと、行動することのようです。といっても、まったく考えないでいいということでもないようで、この時期の思考というか問いについて、筆者は次のように述べています。

自分はなんなのか、なにが真実なのか、という思春期の問いから一歩進めて、次のような問いをこの時期に自問するようになる。自分の望みや抱負をどのように現実に移せそうか。どのようにキャリアをさらに深く掘り進むのがベストか、どこに自分は行こうとしているのか。だれが自分の助けになってくれそうか(p.214)

移行期のことを思春期と表現しているのだと私は理解しましたが、そのときの問いがwhat, whyといったものだとすると、安定期の問いは、how, where, whenといった、「いかに」実行するかに関わる問いのように見えます。前々回の言い方で言うと、whyやwhatは、止まって考える(stop to think)べき問いであるのに対して、howは、考えるのを禁じている(stop thinking)わけではなく、進みながら(進み方を)考えるような問い、と言えるかもしれません。

この章のおかげで、前々回に考えた、「日常の思考が、熟考とはまた違ったタイプの思考」だろうけれど具体的にどのような思考なのか、ということが少し見えた気がします。

第5章の後半についてはまた明日。