キャリア・デザインと思考(7)−移行期の思考としての「統合」

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第5章(後半)を読みました。ここには、中年期のことなどが書かれています。「四十歳から四十五歳が中年への過渡期」(p.219)ということで、就職時に次ぐ大きな移行期として扱われていました。

筆者は、この時期の課題を、ユングを引用して「統合」と論じています。またユングは四十歳を「人生の正午」と呼んだそうで、この時期のことを「正午以降」と表現しています。こんな感じです。

午前の登る太陽の勢いはすさまじいが、その勢いゆえに背景に追いやったもの、影(シャドー)になってしまっていたものを、しっかり統合していくのが、人生の正午以降の課題だという。正午より後には、午前には影だったところにも光があたる。深い意味で、真の個性化は、四十歳以降に始まるのである。それが統合というテーマの起点であるからである。

これだけでは分かるようなわからないような感じだったのですが、さらに、レビンソンという研究者の挙げている具体的な課題が挙げられています。それは:

  1. 若さと老い
  2. 男らしさと女らしさ
  3. 破壊と創造
  4. 愛着と分離

だそうです。「男らしさと女らしさ」で説明すると分かりやすいと思うのですが、「男性の場合、人生の前半の登り調子のときに背景に退いてしまっていた女性性という影を統合しなければならない」(p. 236)ということです。私はこの説明ですっきり理解できました。

同じ移行期でも、就職時の移行期に必要なのは「現実的、多面的な情報収集」でした。それに対して中年期への移行期に必要なのは、多面的な内面的思考とでもいいましょうか、相反する両面を統合することのようです。これらはどちらも「多面性」という点では共通しています。移行期には、多面的に、じっくり何かを考える必要がありそうです。

一方、就職時に重要なのが「情報収集」という外に向かうものであるのに対して、中年期に重要なのは、自分の内側にある影を問題化するという内に向かう思考であるという対比が面白いなと思いました。

もちろん就職時にも、相手側の情報だけでなく、自分側のチェックも必要なわけですが、そこで必要なのはおそらく、両者の「折り合い」であるのに対して、中年期は「統合」とさらに踏み込んでいるのが興味深いですね。