言語活動としてのクリティカル・シンキング

文部科学省が平成22年12月に「言語活動の充実に関する指導事例集」(小学校版,中学校版)というものを出しています(文科省のページはこちら)。

その中に,クリティカル・シンキングという語が2箇所に出てきます。一つは,「第1章 言語活動の充実に関する基本的な考え方」の「(4)思考力・判断力・表現力等の育成と言語活動」の「イ 思考力・判断力・表現力等の育成と言語活動の充実」で,次のように書かれています。

このように,学力に関する各種の調査の結果により,我が国の子どもたちの思考力・判断力・表現力等には依然課題がある。また,課題発見・解決能力,論理的思考力,コミュニケーション能力や多様な観点から考察する能力(クリティカル・シンキング)などの育成・習得が求められているところである*1

これを見ると,書いた人は,次の4つを並列で(別物として?)捉えていることが分かりますね。

もう一箇所は,「第2章 言語の役割を踏まえた言語活動の充実」の「(1) 知的活動(論理や思考)に関すること」の「イ 事実等を解釈し説明するとともに,互いの考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること」の「(鄯)事実等を解釈し,説明することにより自分の考えを深めること」のなかで,次のように書かれています。

事実等を正確に理解した後,それを自分の知識や経験と結び付けて解釈することによって自分の考えをもつこと,さらにその自分の考えについて,理由や立場を明確にして説明することなどを通じて,自分の考えを深めていくことが重要である。
また,他者の考えを認識しつつ自分の考えについて前提条件やその適用範囲などを振り返るとともに,他者の考えと比較,分類,関連付けなどを行うことで,多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し,考えを深めること,すなわち「クリティカル・シンキング」も大切になる。
そのため,自分の考えを深める指導を行う際には,①事実等を知識や経験と結び付けて解釈し,自分の考えをもたせるようにすること,②自分の考えについて,探究的態度をもって意見と根拠,原因と結果などの関係を意識し,説明する際にはそれを明確に示すこと,③自分の考えと他者の考えの違いをとらえ,それらの妥当性や信頼性を吟味したり,異なる視点から検討したりして振り返るようにすることなどに留意することが大切である。

すなわちここに書かれているのは,「事実等を正確に理解した後」に重要になることとして,自分の考えを持ち,深めていくことと並んで,クリティカル・シンキングが大事であるということです。そしてその中身は,「多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し,考えを深めること」と書かれています。まあ,穏当な感じですね。

そのための指導としては,意見と根拠,原因と結果などの関係を意識することと,異なる視点から検討することが挙げられています。

ちなみに私がこの文章の存在を知ったのは,平成24年度の沖縄県教員候補者選考試験の教職教養問題として出されていたからでした。これから,こういう教育が増えていくのでしょうかね,楽しみですね。

*1:『新成長戦略』「成長戦略実行計画(工程表)」平成22年6月18日閣議決定など