反知性的な国民を望む政府?

『政府は必ず嘘をつく─アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』の著者,堤未果氏のインタビュー記事を読みました。

政府は必ず嘘をつく  アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること  角川SSC新書

── 『政府は必ず嘘をつく』というタイトルですが、誰のために嘘をつく、というタイトルですか。例えば犯罪を犯した犯人が嘘をつく、ということは自己弁護ですが、堤さんはどのような意味を込めているのですか。

これは敬愛する歴史学者ハワード・ジン教授の言葉です。「政府は嘘をつくものです。ですから歴史は、偽りを理解し、政府が言うことを鵜呑みにせず判断する為にあるのです」という言葉は、911後のアメリカと311後の日本両国にとって、とても多くの示唆を含んでいると思います。

「歴史」が,政府の嘘や偽りを理解し,鵜呑みにしないことに役立つとあります。「嘘や偽りを理解し,うのみにせずに判断する」というのは批判的思考(クリティカル・シンキング)そのものですが,歴史がそれにとても役立つ,と考えたことはありませんでした(あらゆる学問はどれもそれなりに,批判的思考に役に立つとは思っていましたが)。そのことがこのくだりで認識を新たにできました。と同時に,歴史以外にも,「何か嘘や偽りを理解し,うのみにせずに判断する」ことに役立つものはたくさんあるだろうな,とも思いました。

── 教育を低下させてバカな国民を増やすでしょうね。かなり成功していると思うけど。
なるほど。アメリカではよく、疑問を持たず、批判的思考ができず、政府のいう事を疑わない大衆が政治的にも商業的にも好ましいといわれます。「国民」ではなく「消費者」が一番効率がいいからです。

そういうことが言われているんですね(できたら具体的に言っている人や文言,前後の文脈などを知りたいですね)。
しかし一方で,「「批判的に考え、効果的にコミュニケートし、問題を解決するような高等な能力を示す学生の割合を増やしたい」(1991年の国家教育目標報告書)というようなことも,80年代から繰り返し言っているわけで,これは,それぞれが,「知性主義的な文化(クリティカルシンキング的なものを重視する文化)と,反知性主義的な文化(思考よりも行動を,変革よりも保守を重視する文化)のせめぎ合い」*1の一つの側面なのだろうと思っています。