科学的リテラシー”の教育

明治図書の「楽しい理科授業」2005年6月号の特集は、「授業で育てる“科学的リテラシー”の教育」です(http://www.meijitosho.co.jp/zasshi/shosai.html?bango=06466)。「科学的リテラシー」はPISA型読解力の一つで(という理解が合っているかどうかわかりませんが)、批判的思考とも関係が深いと思うので、買ってみました。

科学的リテラシーPISAでは、次のように定義されているようです。

自然界および人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力

これをみると、批判的思考のもっとも代表的な定義「何を信じ、何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で反省的な思考」(Ennis, 1987)にとてもよく似ている感じがします。特に前半に書かれている「目的」は、どちらも情報の入力出力について述べているという点では同じですね(もっとも、「何を信じるか」は情報選択の話、「自然界の理解」は考え方の話で情報選択ではないので、違うといえば違うのですが。後半については、Ennisはさまざまなケースに対応できるようきわめて一般論で書いているようですが、その多くは、PISAの記述(知識の使用、課題の明確化、根拠に基づく結論の導出)でカバーされるような気がします。

この特集の中には科学的リテラシーについて、概念、実践、測定などについてさまざまに書かれており、納得のいくものもそうではないものもありました。そのうち、私にとってわかりやすかったものとして、次のものがありました。

知識としては知っている。
以前に学習した。
しかし、実際の場面で生かされないとしたら、それは科学的リテラシーが低いということになる。(善能寺正美 「電気の学習」で科学的リテラシーを育てる工夫, p.39)

この考え方は、きわめてシンプルながらも、科学以外のものも含めたリテラシーの教育や測定を考える上で、とても有用な気がします。