心理学的な見方・考え方とは?

次期学習指導要領には,その教科ならではの「見方・考え方」が,学びの深まりの鍵として出てきます*1。しかし,どうもピンときません。

そこで,まずは自分の専門分野である心理学でいうと,見方・考え方って何になるのかを考えてみました。

今回考えるヒントにしたのは,下記の本です。タイトルを和訳すると,『心理学者のように考える方法』でしょうか。

How to Think Like a Psychologist: Critical Thinking in Psychology

How to Think Like a Psychologist: Critical Thinking in Psychology

全部で49セクションありますが*2,いくつかをかいつまんでみてみます。

  • 「なぜ心理学者はそんなにたくさんの専門用語を使うのか?」
    • どんな分野であれ,特別な言葉は,好ましい使い方をすれば専門家には役にたつことが多い,と説明されています
  • 「なぜすべての技法を学ぶ必要があるのか? 私はただ人を援助したいだけなのに!」
    • 心理学的実践が研究法の理解によって強められるから,と説明し,賢い馬ハンスの例が紹介されています
  • 「どうして心理学者は罰の効果を信じないのか?」
    • 罰を与えた後によくなる現象を,平均方向への回帰という統計現象として説明しています
  • 「心理学者はなぜ人工的に設定された状況を研究するのか?」
    • 人工的に設定された状況を研究するということは典型的な状況で現象を理解するということであり,そこから学び取った原則を現実世界に対して適用するための基本を教えてくれる,と説明されています
  • 「心理学者たちはなぜ重要な問題を避けてしまうの?」
    • 科学者は,客観的な証拠によって答えの出る問題しか扱わない,と説明されています

1割程度を抜粋してみましたが,ざっと見た感じ,心理学の研究法(方法論=考え方)への言及が多い感じです。もちろんそれだけでなく,心理学の研究を通して明らかになった概念(「平均方向への回帰」など)を用いて日常の現象を説明する,ということも行われています。そちらは,心理学を学んだ人が日常の現象を見る見方(認識論)といえるかと思います。

後者の,「心理学の研究結果を基にした日常の見方」に関しては,私も大学の講義で重視してきた点なので,それについて,次回以降の記事で,確認していこうと思っています。

*1:H28中教審答申の記述より

*2:私が読んだ1996年版は45セクションでした。以下は1996年版についてです