2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

二重過程理論から見た「思考」

かつて,「考えることってどういうことだろう?」ということを考え,「「考えること」についての覚書」という紀要論文を書きました*1。 そのとき,参考にしたいくつかの論考の中で,私なりにこれは大事だと思ったのは次の2つでした。 胸の中の二つあるいは…

二重過程理論から見た意識的思考

しつこく『心は遺伝子の論理で決まるのか』について書いているわけですが,本書が私にとって示唆的だった点の一つとして,意識的思考の位置づけが少しすっきりした,という点が挙げられます。たとえば『考える脳・考えない脳』では,意識的思考のことを「古…

二重過程理論の中の批判的思考(5)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』をまとめてきました。これに基づいて,スタノヴィッチの二重過程理論に批判的思考(クリティカルシンキング)がどう位置づけられているのかについて,考えてみました。 おさらいをすると,二重過程理論とは,並列分散処理を…

二重過程理論の中の批判的思考(4)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』の4回目(最後),今日は7章と8章です。 7章では,「分析的システムの,ロングリーシュ型の目的は,どのように発生するのか」(p.247)という問いが検討されています。念のために確認しておくと,ショートリーシュ型であ…

二重過程理論の中の批判的思考(3)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』の3回目,今日は5章と6章です。 5章では,進化心理学者のなかには,分析的処理メカニズムの存在を否定する理論家も少なくないことから,それについて反論が述べられています。 たとえば「一般知能は,実験室と実生活双…

二重過程理論の中の批判的思考(2)

昨日に引き続き,『心は遺伝子の論理で決まるのか』の3章と4章について書きます。 第三章では,合理性(道具的合理性)と進化的適応を区別すべきことが述べられています。「合理性が乗り物の利益にかかわるのに対して,進化的適応は遺伝子の利益にかかわり…

二重過程理論の中の批判的思考(1)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』を読みました。2008年に翻訳が出されているのですが,もっと早くに読めばよかった,と強く思いました。それは,「思考」について考える上で,本書がとても示唆的な内容を持っているから,というだけではなく,心理学や関連…