2012-01-01から1年間の記事一覧

writer's blockからの脱却

ライターズブロックという言葉があるそうです。文章を書いていて書けなくなることです。今,論文を書いていて95%ぐらい終わったのですが,書くプロセスで,2回ほど大きなライターズブロックに見舞われました。幸いにしてそこから抜け出すことができたので…

質的分析(補足)

昨日書いたことですが,「常識」が,何を指しているのか良く分からなかったという意見がありました。これはひょっとしたら,「暗黙の前提」という表現をした方が理解がよかったかもしれません(あるいはスキーマ?)。言い方を変えれば,「それがあることに…

質的分析のワークショップ

週末,土曜日の丸1日と日曜日の午前を使って,SCATという質的分析のワークショップに参加してきました(開発者のページ)。講師は開発者である大谷先生。受けながら,いろいろなことを考えましたので,メモ風に記しておきたいと思います*1。私がこの手法に…

ライフスキルと批判的思考

とある論文*1を読んでいたら,ライフスキル教育に批判的思考が含められていることが書かれていました。次のくだりです。 世界保健機構(WHO)の精神保健局ライフスキルプロジェクトでは,「日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して,建設的かつ効果的…

二重過程理論から見た「思考」

かつて,「考えることってどういうことだろう?」ということを考え,「「考えること」についての覚書」という紀要論文を書きました*1。 そのとき,参考にしたいくつかの論考の中で,私なりにこれは大事だと思ったのは次の2つでした。 胸の中の二つあるいは…

二重過程理論から見た意識的思考

しつこく『心は遺伝子の論理で決まるのか』について書いているわけですが,本書が私にとって示唆的だった点の一つとして,意識的思考の位置づけが少しすっきりした,という点が挙げられます。たとえば『考える脳・考えない脳』では,意識的思考のことを「古…

二重過程理論の中の批判的思考(5)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』をまとめてきました。これに基づいて,スタノヴィッチの二重過程理論に批判的思考(クリティカルシンキング)がどう位置づけられているのかについて,考えてみました。 おさらいをすると,二重過程理論とは,並列分散処理を…

二重過程理論の中の批判的思考(4)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』の4回目(最後),今日は7章と8章です。 7章では,「分析的システムの,ロングリーシュ型の目的は,どのように発生するのか」(p.247)という問いが検討されています。念のために確認しておくと,ショートリーシュ型であ…

二重過程理論の中の批判的思考(3)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』の3回目,今日は5章と6章です。 5章では,進化心理学者のなかには,分析的処理メカニズムの存在を否定する理論家も少なくないことから,それについて反論が述べられています。 たとえば「一般知能は,実験室と実生活双…

二重過程理論の中の批判的思考(2)

昨日に引き続き,『心は遺伝子の論理で決まるのか』の3章と4章について書きます。 第三章では,合理性(道具的合理性)と進化的適応を区別すべきことが述べられています。「合理性が乗り物の利益にかかわるのに対して,進化的適応は遺伝子の利益にかかわり…

二重過程理論の中の批判的思考(1)

『心は遺伝子の論理で決まるのか』を読みました。2008年に翻訳が出されているのですが,もっと早くに読めばよかった,と強く思いました。それは,「思考」について考える上で,本書がとても示唆的な内容を持っているから,というだけではなく,心理学や関連…

「21世紀型スキル」を育む授業

前に21世紀型スキルってなに?というエントリを書きましたが,「21世紀型スキル」を育む授業が公開された,という記事がありました。記事の正確なタイトルは,「東大、MS、レノボなどが「21世紀型スキル」を育む授業を公開 | 日経 xTECH(クロステック)東大…

教育改革とクリティカルシンキング

4日の国家戦略会議で平野文部科学大臣が「社会の期待に応える教育改革の推進」と題する報告を行った,との記事がBLOGOS(6/5)にありました。この報告のなかに,クリティカルシンキングの語が出てきます。報告資料(PDF)には7つの教育改革が書かれているの…

拙著の感想

拙著『最強のクリティカルシンキング・マップ』への感想をいただきましたので,2件紹介します。まずは,筑波大学(元お茶の水女子大学)の内田伸子先生。本をお送りしたところ,「一気に拝読しました。感銘を受けました(^-^)」とのことで,次のような感想を…

クリティカルシンキングで決断

「クリティカル・シンキングによる人生の決断」という講座が,「ママモコモ」というサイトの「ママのチエ」というコーナーで紹介されていました(こちら)。講師は狩野みき先生という英語講師の方,対象は母親(このときは15人),所要時間は1時間半だった…

ICUにおけるクリティカルシンキング教育

調べ物をしていたら,「リベラル・アーツ教育の根底を支えるクリティカル・シンキング〜クリティカル・シンキングによる授業展開とその成果〜」(国際基督教大学 富山真知子)という文章に行きあたりました。国際基督教大学のリベラル・アーツ教育を支える,…

反知性的な国民を望む政府?

『政府は必ず嘘をつく─アメリカの「失われた10年」が私たちに警告すること』の著者,堤未果氏のインタビュー記事を読みました。 ── 『政府は必ず嘘をつく』というタイトルですが、誰のために嘘をつく、というタイトルですか。例えば犯罪を犯した犯人が嘘をつ…

21世紀型スキルってなに?

21世紀型スキルという語があるようです。その中には批判的思考(クリティカルシンキング)も含まれているようです。 私はこのことについてほとんど知らないので,これが何で,どこからどのような経緯で出されてきた概念なのかについて,とりあえず,Googleで…

『最強のクリティカルシンキング・マップ』が出ました

一般向けのクリティカル・シンキング本を出しました。こちらです。最強のクリティカルシンキング・マップ―あなたに合った考え方を見つけよう作者: 道田泰司出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2012/05/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 8人…

アメリカの高校〜大学で学ぶ批判的思考

ちょっと前の記事ですが,ニューズウィークのインタビュー記事で,「彼女が「白熱教室」で学んだこと」というのがありました。高校でアメリカに渡り,大学,大学院を出てグーグルで働いている日本人へのインタビューです。このなかに,次のようなやり取りが…

外向的な(考えるより行動する)社会

TEDで,「内向的な人が秘めている力」というスピーチを見ました(こちらに動画と翻訳があります)。そのなかで,思考と,協同的活動についての部分が興味深かったので,抜き書きしておきます。 〔前略〕 今の教室はどんな風でしょう? 私が子どもの頃は、机…

判断力としての批判的思考

『小学校 学習指導要領の解説と展開 総則編―Q&Aと授業改善のポイント・展開例』を見ていたら,批判的思考の語が出てきたので,忘れないように記しておきます。小学校学習指導要領の解説と展開 総則編―Q&Aと授業改善のポイント・展開例作者: 無藤隆,寺崎千秋,…

言語活動としてのクリティカル・シンキング

文部科学省が平成22年12月に「言語活動の充実に関する指導事例集」(小学校版,中学校版)というものを出しています(文科省のページはこちら)。その中に,クリティカル・シンキングという語が2箇所に出てきます。一つは,「第1章 言語活動の充実に関する…

批判的思考本来の意味がぼやけてる?

とあるブログにコメントとして書いたので,こちらにも転載しておきます。これは,批判的思考に関するシンポジウムに参加された方が,「批判的思考がなんだか「要するに賢いこと」みたいになってきて,本来の概念の意味がぼんやりしてきてないだろうか」とい…

教師が飛躍するとき(4)−うまくいかないときの対処法

前回に引き続き、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいます(今日で最後です)。平林和枝先生の「研鑽を積み重ねて」という論考では,「教師が力を入れるほど,子どもがしらけたり教師と違う方向に行く」場合の対処法が書かれていました。それは次のよ…

教師が飛躍するとき(3)−見守るか,指導するか

前回に引き続き、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいます(進んでいない...)。飯島修治先生の「自分を生徒の立場において」という論考は,興味深いものでした。飯島先生は,理学部を出て高校の教師になっているのですが,定時制で勤務しながら大…

教師が飛躍するとき(2)−思いや行動を可視化する

前回に引き続き、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいるのですが、他の章では、たとえば「赴任校で教師同士が磨き合う雰囲気があったので成長できた」みたいな感じのものが多く、「考えることについて考える」ことにつながるものは、なかなか見当たり…

教師が飛躍するとき(1)−一人ひとりの思いを可視化して問題解決

今、『教師が飛躍するとき』という本を読んでいます。この本は、10人の教師がそれぞれ体験した「飛躍したとき」のことについて語っている本です。教師が飛躍するとき―つまずきの克服・成長の仕方作者: 横尾浩一出版社/メーカー: 学陽書房発売日: 1995/03メデ…

キャリア・デザインと思考(7)−移行期の思考としての「統合」

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第5章(後半)を読みました。ここには、中年期のことなどが書かれています。「四十歳から四十五歳が中年への過渡期」(p.219)ということで、就職時に次ぐ大きな移行期として扱われていました。筆者は、こ…

キャリア・デザインと思考(6)−安定期の思考

昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第5章(前半)を読みました。第5章の前半では、20代全般の問題について書かれています。就職時が移行期だとすると、就職後の20代は、「遭遇→順応(→安定)」をたどる、広い意味での安定期といえるかと…