環境教育と批判的思考

ふと気がつくと,大学図書館のページから日経BP社の雑誌記事内容が検索できるようになっていました。「批判的思考」で検索してみたところ,何件かヒットしたので,紹介します。

一つは,『日経エコロジー』誌2005年5月号の「World Trend from U.S.A」というコーナーで,アメリカの研究所の人の文章です(タイトルは「環境教育の変化に兆し 保護運動のルーツに立ち戻る」)。

その中で,批判的思考の語は次のように出てきます。

 米国環境保護局(EPA)のホームページには,環境教育についてこう述べている。「環境教育は,批判的思考や問題解決,意思決定にかかわる能力を高め,情報に基づいて責任ある決断をするため,環境問題の様々な面について熟考することを教えるものだ。特定の見解や行動を提唱するものではない」(p.132 強調は引用者)

この中の「特定の見解や行動を提唱するものではない」という部分を筆者は批判しているのですが,それは,このような考えの結果,環境教育が,本来の保護運動的なものから離れ,「無色透明な統計や分析に特化した教育」になってしまっているからのようです。

それはさておき,ここで興味深いのは,環境教育の中身として,批判的思考・問題解決・意思決定が位置づけられている点です(しかも「情報に基づいて責任ある決断をする」「様々な面について熟考する」なんて,きわめて批判的思考的な発想ですね)。

もう一つ興味深い点としては,それが具体化されたときに,,「無色透明な統計や分析に特化した教育」になってしまう,という点も挙げられます。批判的思考教育のあり方にはさまざまな方向性が考えられると思いますが,もしここに書かれていることが事実であり,また,この筆者の批判も当を得たものであるのであれば,そのような教育は,当初の目的(本来,「批判的思考」という語を用いて実現しようとしたこと)を忘れてしまっているのかもしれませんね(もっとも,そのような教育を展開する側にも何らかの理由があるかもしれないので,この記事だけではなんともいえませんが)。