言語力と思考力

この4月に,『言語力が育つ社会科授業』(寺本潔(編著),教育出版, \2,100)という本が出ました。私も,「対話を通して育まれる思考」(第1部第2章), 「振り返り(リフレクション)と批判的な学びを促す教師の出方」(第4部第2章)という2つの章を書きました。

この原稿を書き始める時点では,「言語力」と「思考力」をどう位置づければよいのか,私にはよくわかりませんでした。それで,「言語力育成協力者会議」の報告書案('07.8.16)を読んだりしながら自分なりに考えた*1結果,次のように考えるしかない,という結論にたどりつきました。

思考力の育成に関していうならば,思考力を高めるためには,思考そのものにアプローチすべきである。当たり前といえば当たり前のことだが,それ以上でもそれ以外でもない。そういう意味では,思考力育成を考えるにあたって,「言語力」という概念はなくてもあまり問題ない。ただし,思考を行ううえでも,また思考力を育てるうえでも,「ことば」は重要な役割を果たすことが多い。そこで,思考力を育てる際には(その他の能力を育てる際にも)言葉に意識的に注意を向けてみましょう,という意味が「言語力の育成」という言葉に込められていると考えると良いであろう。(pp.12-13)

そう考えたときに,思考力育成は「対話」を通したものになる,というのが第1部第2章の趣旨です。他の章では,地理教育の寺本先生の論考,および,二人の小学校の先生の実践などが収められています。機会があればお読みくだされば幸いです。