批判的思考教育のための批判的思考概念・測定(まとめ)
とある大学の先生に,批判的思考の定義や測定に関する質問を受けました。具体的には,批判的思考教育についての研究を行ないたいのだが,研究によって様々な定義や測定尺度が使われているが,それらがどのような側面のことなのかや,自分の分野に当てはまるのかが分からない,というような内容でした。この悩みにお答えすることは,今まで書いてきたことのまとめ的なものになりそうなので,私が書いたことを転載します。
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批判的思考研究は多岐の分野に渡っているため、さまざまな測定法や定義があって戸惑われるのだろうと思います。そういうとき、私はできるだけシンプルに考えるのがいいと考えています。つまり、「目の前の学生にとって必要なもの(欠けているもの)を教育し、それを測定する」ということです(測定も、学生が目標をどの程度達成しているかという目標準拠の評価を行うと同時に、学生が大学教育を通して何を学んでいるかというゴールフリーな評価を行うことで、学生にとっての学びの経験を知ることも重要ではないかと思います)。
批判的思考教育を行うにあたって、「批判的思考」という特別なものがあると考えてしまうと、さまざまな定義や測定法や教育法の樹海にさまよいこんでしまい、下手をすると抜け出られなくなります。そうならないためには、「目の前の学生にとって必要なもの」を軸にするのが一番いいと私は思っています。
その軸がはっきりしたとき、さらにそれを明確にしたりする上で、過去の研究の蓄積は役立つと思いますが、まず過去の研究を先に見てしまうと、軸がぶれてしまう危険性があるのではないかと思っています。つまり、目の前の学生に必要なもの・足りないものとは無関係に批判的思考を定義し、教育し、測定してしまう危険性です。
ちなみにこのようなことは,批判的思考の概念・測定・教育のそれぞれについて,次の記事で書いています。
◆批判的思考の概念(http://d.hatena.ne.jp/michita/20071016/p1)
◆批判的思考力の測定方法・評価基準(http://d.hatena.ne.jp/michita/20071031/p1)
◆思考力育成のカナメ(http://d.hatena.ne.jp/michita/20090411/p1)