ビジネス系クリシンは日本だけ?

前回は,ビジネス系ロジカルシンキングのことを書きましたが,私が一番関心があるのは,ロジカルシンキングよりもクリティカルシンキング(批判的思考)です。そして,クリティカルシンキングにおいても,ビジネス系のものは非常に幅を利かせているというか,よく見かけます。しかも内容的には,クリティカルシンキングロジカルシンキングと,あまり区別されていないものもあるような印象です。このことに関して,ごく簡単にですがamazonで検索して分かったことがあるので,メモ的にここに書いておきます。

amazon.co.jpの和書で「クリティカル シンキング」で検索します。検索結果を「キーワードに関連する商品」で並べ替えたとき,最初に出てくる12冊中6冊,つまり半分はビジネス系と思しき本です。検索結果を「売れている順番」で並べ替えると,最初に出てくる12冊中,10冊か11冊はビジネス系と思しき本です。確かに幅を利かせているようです。

ではamazon.comではどうでしょうか。同じように"books"カテゴリーで「critical thinking」を検索します。検索結果を「キーワードに関連する商品」で並べ替え,概要やカスタマーレビューを眺めてみました。見た感じ,最初に出てくる12冊中にビジネス系と思しき本は一冊もありませんでした(13位から24位にも見当たりませんでした)*1。並んでいるものの多くは,大学の教科書のようでした。「売れている順番」で出てきたものも似たような感じでした。

試しに「なか見検索」(LOOK INSIDE!)の可能な本を何冊か選んで,目次を見てみましたが,ビジネス系の匂いのするものはありませんでした。あるいは「MECE」や「logic tree」で本文を検索してみましたが,ヒットするものはありませんでした。以上の結果から見る限り,アメリカでは「ビジネス系クリシン本」というのは,ないか,あったとしても,日本のように売れているわけではないようでした*2

もちろんamazonの検索結果が,市場動向を正確に反映しているというわけではないでしょう。たとえば,どこかの研修のテキストとして使われている本がamazonでまとめ買いなどされていたら,一般的には売れていなくても,amazonの検索結果としては上位にくるでしょう。あるいはアメリカではひょっとしたら,大学生は教科書を買うのにamazonをよく利用する,ということで教科書類が上位に来ているのかもしれません。

でもたとえばamazon.co.jp,バーバラ・ミントの『考える技術・書く技術』のページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」では,ビジネス系クリシン/ロジシン本が出てきます。しかしamazon.comで原著("The Minto Pyramid Principle: Logic in Writing, Thinking, & Problem Solving")の同じところを見ても,思考関連の本*3は約100冊中2冊しかありませんでした。

これはどういうことでしょう。ひょっとして,ビジネス系クリシン本というのは,日本独特のジャンルなのかも,とこの検索結果から思いました。

ちなみに私なりに推測したのは,もともとビジネス系ロジシンという下地があったところに,1990年代後半に何冊かクリシン本が出たのに刺激されて,ビジネス系ロジシンの世界にいた人たちが,ビジネス系ロジシン的な概念であるMECEやロジックツリーの話と,クリシン的な「暗黙の前提」とか「思考の落とし穴」的な話などをくっつけて,「ビジネスに役立つクリティカルシンキング」として売り出したのではないか,ということです*4

*1:あまりの日本との違いにちょっとびっくりしてしまいました

*2:あくまでも数冊を見た限りの話ですが

*3:ビジネス系かそうでないかは関係なく「thinking」とタイトルについている本

*4:自分としてはこの考え,いい線を言っているのではないかという気がするのですが,でもこういう仮説ってどうやって検証・確認すればいいんでしょうね