意思決定について(7)−落ち穂拾い

意思決定について最近考えたことはだいたい前回で書き終わったのですが,せっかくなので,これまでに引用しなかったけれども読んだ本について触れておきましょう。そういう本が2冊あります(これ以外にも心理学書の意思決定の章を参照したりもしてはいるのですが)。

一冊はビジネス系の本で,『意思決定の理論と技法―未来の可能性を最大化する』(籠屋, 1997 ダイヤモンド社) です。この本は,6つの視点から意思決定について論じていました。6つの視点とは,「的確な考え方のフレーム設定」「創造的かつ実行可能な戦略代替案」「有用かつ信頼性の高い情報」「明確な価値判断基準」「明快かつ正しいロジック」「実行への関係者全体のコミットメント(やる気・覚悟・決意)」で,これで章立てられています。要は,「「的確なフレーム」の中で「創造的かつ実行可能な戦略代替案」を検討し,「不確実性を的確にあつかった有用かつ信頼性の高い情報」を用い,「明確にされた価値判断基準」に照らして,論理的に最も良い戦略代替案を選択する」(p.21)ということのようです。

私にとっては全体的にわかりにくい本で,たとえば「明快かつ正しいロジック」ってどんなのだろう?と思っても,「インフルエンス・ダイアグラムにより,意思決定項目と不確実要素が何か,それらの関係はどうなっているのかをはっきりさせる」(p.199)ことと,「ディシジョンツリーを使い,将来に行われる意思決定や遭遇する不確実要因を順に並べてベストな意思決定を行う」(p.209)という感じで,どうやらツールを使うようだなというのはわかるのですが,どのような考えで具体的にどうするのかは,私にはちょっとわかりにくかった,というのが印象で,それで今回は取り上げませんでした。

もう一冊は学術系の本で,『思考の技術―あいまい環境下の経営意志決定』(瀬尾, 1994 有斐閣)です。この本は,竹村(1996)に「意思決定の支援のための方法論として,代表的なものに,決定分析(decision analysis)のの考えがある(Keeney & Raiffa, 1976; 瀬尾, 1994)」とあったので買ってみたのですが,経済学者が書いた数式いっぱいの本で,私にはなかなか理解の難しい本でした。

ただ,そのような意思決定の理論だの数式だのが必要になってくるのは,情報の不完全性(あいまいさ,複雑さ,細分化など)や人間の知覚能力の限界から来ているのだなあという程度のことは分かりました。

もちろん他にも,意思決定関連本はたくさんあるのですが,見た感じ,「ビジネス系ロジカル・シンキング本」のニオイのするものは,とりあえず避けました(著者名,目次,同著者の他著などを見て)。もっとも,「意思決定」の世界を徹底的に極めようと思っているわけではなく,ちょっとこの世界の概略が知りたいなあというぐらいですので,あまり幅広く探索したわけではないんですけどね。ま,私なりに概略的なもののごく一部が見え,私なりに整理できたかな,と感じたので,とりあえずこれはここで打ち切ろうと思っています。

それにしてもこの問題は,ここしらばく行き詰まって考えがまとまらなかったのですが,自分なりにブログ上にまとめてみると,それまでは茫漠としてつかみ所がないと感じていたことについて,それなりに見えてくるものだなあと,改めてブログの効力を感じました。それにしてもこれって何なのでしょうね。断片でもいいからとりあえず書けるとか,気持ち的にそれなりに読者への語りかけを意識しやすいというところなのでしょうか。