キャリア・デザインと思考(5)−移行期の思考
昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第4章を読みました。
同書では、大きく言うとキャリアを「安定期と移行期の繰り返し」と捉えています*1。そのなかで、第4章では「就職時と入社直後の適応」、つまりキャリアにおける、人生最初の移行期について書かれています。
特に本章では、「就職時」(就職前)のことが扱われており、「採用時のリアリズム」(RJP:リアリズムに基づく事前の職務情報)の重要性が強調されています。それはたとえばこんな感じです。
「こんなよさそうな会社なら、わたしでも入りたいと思う」とイメージ的に感じるのではなく、「たいへんなこともあるというのがよくわかったけれど、それでも株には変動商品ゆえのロマンがあるし、これからは、たいへんさをカバーするだけの知的武装をしたい」と決意して、新しく入っていく世界の状況をもっとリアルに理解したうえで、きちんと自己決定して入っていくほうがいい。(p.179)
これは一般化していうならば、移行期(変動期)に思考する際には、現実的、多面的な情報収集が欠かせないということですね*2。
もっとも就職時に重要なのは、このような「相手側についての思考」だけでなく、「自分自身についての内省的な思考」も重要でしょうね。そのことは同書では、第一章で「自己イメージのチェック」とか「自分についていったい何を知っているのか」といった問いが扱われています。
相手について知り、自分について知るというのは、孫子の「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆[あや]うからず」*3を思い出させますね。