キャリア・デザインと思考(4)−stop thinking & stop to think
昨日に続き、『働く人のためのキャリア・デザイン』の第3章を読みました。
この章を読んでいて、キャリア・デザインと思考が密接に関係することに気付いたのですが、それは以下のくだりからでした。
高校時代の受験英語で、stop smokingとstop to smokeの違いを習ったのを覚えておられるだろうか。前者が「禁煙する(タバコを吸うのをやめる)」、後者が「喫煙するために立ち止まる(立ち止まってタバコを吸う)」という意味だ。このsmokeという動詞を、think(考える)やdesign(デザインする)に変えてみてほしい。
ふだんの忙しい日常は、立ち止まって考える間もない。そのような状態は、(「禁煙」をもじれば)「禁考」していることになる。そのおかげで、悩むこと、迷うことなく、日々過ごせる。自分の長期的な働き方をデザインするなどという発想はもちにくい。だから節目では、どんなに行動派のひとであっても、立ち止まって考えないとダメだ。(pp. 120-121)
前の言い方と対応させるなら、ドリフト……考えるのを止める、節目……立ち止まって考える、ということですね。確かにそうだなと思いました。日常は悩んだり迷ったりせずに過ごす。しかしそういう過ごし方ではいけない時期がある、ということです。
私も、考える(じっくり考える)ことって不自然なことだと思っています*1。じゃあなんでそんなことを人間はするのかというと、それは環境に適応するための1つの戦略だと考えられますが、そのことは「「考えること」についての覚書」という論考(PDF)で書きました。
考えてみれば、環境が「変化」するから適応が必要なわけで、さほど変化しない日常においては、適応戦略(=思考)はさほど必要ないんですね。そのことが金井氏の論考で分かりました。
とはいっても日常でも、ふと立ち止まったり、ちょっとした判断や意思決定、問題解決などをするための思考は必要でしょうが、それは熟考とはまた違ったタイプの思考なのだろうと思います*2。