アクティブ・ラーニングと批判的思考教育

今日,たまたま「アクティブ・ラーニング」という語に出会いました。早速検索してみたところ,溝上(2007)*1という,大学における実践を概観した論文がありました。それを読んで,批判的思考教育と関連させて考えたことをメモ書き的に書いておきます。まず,…

意思決定について(7)−落ち穂拾い

意思決定について最近考えたことはだいたい前回で書き終わったのですが,せっかくなので,これまでに引用しなかったけれども読んだ本について触れておきましょう。そういう本が2冊あります(これ以外にも心理学書の意思決定の章を参照したりもしてはいるの…

意思決定について(6)−建設的な対立と合意を生み出す

前回,「探求型の意思決定」を紹介しましたが,ではそれは具体的にはどのように行えばいいのでしょう。そのことについては,『決断の本質』にありましたので紹介します。なおこの本は,たまたまアマゾンで買ったのですが,著者は,前回紹介した「プロセス重…

意思決定について(5)−プロセスとしての意思決定

すっかり間が空いてしまいました。この間に東日本大震災が起き*1,また私的にも大きな出来事がありました。が,そろそろ考えを続けていこうという気になりましたので書きます。前回,「ビジネス系意思決定論と学術系意思決定論の違い」ということを書きまし…

意思決定について(4)−KT法

昨日紹介した『意思決定入門』のベースになっているKT法について知るために,『新・管理者の判断力─ラショナル・マネージャー』(ケプナー&トリゴー 1985 産能大学出版部)を読んでみました。新・管理者の判断力―ラショナル・マネジャー作者: C.H.ケプナ…

意思決定について(3)−意思決定における目的・目標の重要性

昨日紹介した『意思決定入門』(中島 一 1990 日経文庫)の第二版である『意思決定入門』(中島 一 2009 日経文庫)は,ほぼ原型をとどめない大幅改訂がなされており,私が初版に感じていた問題がいくつか解消されていました。意思決定入門 (日経文庫)作者: …

意思決定について(2)−『意思決定入門』(中島, 1990)

昨日,「ビジネス系の意思決定関連本で,決定部分についてはほとんど焦点が当たっていないものもある」と書きましたが,それは,『意思決定入門』(中島 一 1990 日経文庫)を念頭に置いていました。 この本の筆者は,ケプナー・トリゴー(日本)株式会社の…

意思決定について(1)

最近,「意思決定」というものを自分の中で位置づけようと考えているのですが,なかなか考えがまとまらないので,久々にこの場をメモ代わりに書いていきたいと思います。まず確実にいえるのは,「意思決定(decision making)とは,ある複数の選択肢(alternati…

考えるために重要なこと

先日,「パワーポイントの弊害、米軍大将らが指摘」という記事を書いた。記事を書いたと言っても,他のwebページの記事を引用(というかクリッピング)しただけなのだが。そうしたところ,コメントがつけられていた。私自身,ちょっと前まで忙しく,このペー…

「パワーポイントの弊害、米軍大将らが指摘」

スラッシュドット・ジャパンに,米軍でパワーポイントの弊害を指摘する声が上がっている,という記事がありました(http://slashdot.jp/it/article.pl?sid=10/04/30/0143243)。元記事は,New York Timesのようです(http://www.nytimes.com/2010/04/27/worl…

聴くことと考えること

「聴く」ということが「考えること」と何か関係があるような,でもよく分からないような感じがしていました。でもそのことについて少し考えが進んだので,メモ的に書いておきます。 といってもいきなりその話に入る前に,『DIAMONDハーバード・ビジネス・レ…

ロジカルシンキングと論理学(4)〜ロジックツリーの論理性

前回考えたことを元に,ビジネス系ロジシンについて考えてみたいと思います。前回たどり着いた結論はこうでした。 「MECE=論理的」ではない。MECEは選言三段論法の前提(その1)にすぎない。 「ME-CE」のすべてが必要なわけではない。必須なのは「モレなく…

ロジカルシンキングと論理学(3)〜MECEの論理性

前回の続きというよりも,直接的には前々回(ロジカルシンキングと論理学(1))の続きです。そこでの疑問は要するにこういうことでした。 ビジネス系ロジカルシンキングは,論理学者のいう「論理的」とは違うようだ でも一方で,「MECEで考えるのって「論理的…

ロジカルシンキングと論理学(2)

前回の続きですが,論理学の話に行く前に,もう少しビジネス系ロジシンの話を書いておきましょう。というのは,前回書いた「液晶プロジェクタが写らない」話は,内容がビジネスっぽくないし,ビジネス系クリシンのやり方そのものではないと思いますので。今…

ロジカルシンキングと論理学(1)

ビジネス系におけるロジカルとは?の続きです。そろそろ「ビジネス系ロジカルシンキング」と「論理学」の関係について,具体的に考えてみましょう。ちゃんと論じきれる自信はまったくないのですが,それでも少しは何かが書けそうなので,とりあえず見切り発…

ビジネス系クリシンは日本だけ?

前回は,ビジネス系ロジカルシンキングのことを書きましたが,私が一番関心があるのは,ロジカルシンキングよりもクリティカルシンキング(批判的思考)です。そして,クリティカルシンキングにおいても,ビジネス系のものは非常に幅を利かせているというか…

ビジネス系におけるロジカルとは?

新しいカテゴリーを作りました。ビジネスの世界でよく,「ロジカルシンキング」という語が使われています(以下,「ビジネス系ロジシン」*1と略します)。ここでいう「ロジカル」ってどういうことなんだろう,と最近考えています。そこでこのカテゴリーを使…

初等・中等教育における思考力育成教科の開発

今日,たまたま見つけたのですが,広島大学附属福山中学校・高等学校では,「クリティカルシンキングを育成する中等教育課程の開発」という課題で研究をやっているようです*1。教科別の研究主題は以下の通りです*2。 国語 学習者の世界を拡げる「ことば」の学…

「批判」を通して無批判的思考を育てる

批判的思考とは,ごく簡単にいうと,「批判を通して思考を深めること」だと思っています*1。しかし,「批判」があれば思考は深まる,というわけではありません。「批判」をうまく(悪く?)用いることで,無批判的思考を育てることもできるのです。 金(1994)…

堀栄三氏(大本営陸軍部参謀)

堀氏は第二次世界大戦当時,大本営陸軍部の参謀として情報業務に携わっていた軍人です。第二次世界大戦時の日本軍というと,視野が狭く,立ち止まって戦争の目的や方法を省みることもせず,自分に都合の悪い情報は無視し,あるいは批判的な人間を解任や左遷…

カルロス・ゴーン(日産CEO)

カルロス・ゴーン氏が日産を立て直すために行ったこと*1も,きわめてクリティカル・シンカー的だと私は思いました。 ゴーン氏が来日して最初に行ったのは,正確に日産の現状を捉えることでした。そのために,事前に持っていた知識はすべて脇において,さまざ…

スポーツと「無」批判的思考

スポーツと思考の続きのような話です。長谷川投手や為末選手の例からもわかるように,スポーツは「仮説検証」ときわめて相性がよさそうに見えます。というのは,試合の勝ち負けにせよ,選手の成績にせよ,結果が数字ではっきり出るからです。とすれば,「こ…

長谷川滋利投手(元メジャーリーガー)

新しいタグを作ってみました。[CTer]は,批判的思考者(critical thinker)の略です。世の中には,「ああこの人は批判的思考者だなあ」と思う人がいます。そういう人を紹介してみようというタグです。さしずめ「批判的思考者列伝」という感じでしょうか。 最近…

「暗黙の前提」の重要性

前々から、批判的思考を考える上で、「暗黙の前提にセンシティブになること」はとても重要だと思っていました。しかしそれがなぜ重要なのか、今ひとつうまく言語化できていませんでした。しかし今日やった授業のなかで、そのことが少し見えてきたような気が…

批判的思考教育のための批判的思考概念・測定(まとめ)

とある大学の先生に,批判的思考の定義や測定に関する質問を受けました。具体的には,批判的思考教育についての研究を行ないたいのだが,研究によって様々な定義や測定尺度が使われているが,それらがどのような側面のことなのかや,自分の分野に当てはまる…

心理臨床と批判的思考

大学院の授業で、受講生に「心理臨床と批判的思考の関係」について考えてもらいました。受講生は、半分が臨床心理学専攻の学生、半分が学校教育専攻(心理学コース)の学生です。前の週に、臨床心理学専攻の学生の一人が「カウンセリングと思考」に関する発…

懐疑とバランス

沖縄タイムス2009年5月12日19面(文化欄)に,分子生物学者の福岡伸一氏が「「自己懐疑」を持とう−物知りとは違う「知的」」という文章を寄稿しておられました。実に批判的思考的な話で,興味深く読みました。一部を引用します。 知的であることの最低限の…

思考力育成のカナメ

とある大学の先生と,思考力育成について少しメールでやり取りしました。私は以下のように書きました。 学生の思考力を育成するには 授業中,ともかく考える時間をたくさん作る 考えがいのある課題を設定する 考えることが意味あると実感できる場を作る に尽…

言語力と思考力

この4月に,『言語力が育つ社会科授業』(寺本潔(編著),教育出版, \2,100)という本が出ました。私も,「対話を通して育まれる思考」(第1部第2章), 「振り返り(リフレクション)と批判的な学びを促す教師の出方」(第4部第2章)という2つの章を書き…

領域普遍的批判的思考の測定

ちょっと思いついたのでメモです。領域普遍的な批判的思考を(そういうものがあったとして*1)どのように測定したらいいか,ということについてです。このことを考える上で,大前提とすべきは,私は次の3つだと思っています。 批判的思考は,必ず特定の領域…